肩を脱臼してしまった:肩関節反復性脱臼・亜脱臼
肩関節反復性脱臼・亜脱臼(かたかんせつはんぷくせいだっきゅう・あだっきゅう)
■どのような障害か
スキーの 転倒で肩を斜面に強くぶつけたときや、バレーボールのサーブ、テニスやバドミントンのスマッシュなど腕を上げて後ろに回す動作をしたときに肩関節がはずれ るのが肩関節脱臼です。亜脱臼はいわば不完全な脱臼です。関節がはずれかかってはすぐにもどるので、瞬間的に強い痛みはありますが、肩がはずれたとは感じ ないこともあります。
繰り返し起こる脱臼を反復性脱臼と呼び、最初のきっかけがケガによるものと、生まれつき肩関節がゆるいため(→動揺肩:ルーズショルダー)に起こるものがあります。
ケガによる肩の脱臼は腕の骨(上腕骨)が前方にはずれるケースが多く、高校生以上のスポーツ選手によく見られます。脱臼・亜脱臼を経験した人の70~80%が反復性脱臼に移行するといわれています。
また、動揺肩は両肩が前後や下方にずれるような感覚があるのが特徴で、特に女子に多い傾向があります。
いずれも繰り返す回数が多くなるほど、より簡単にはずれるようになります。普段でも、人とぶつかったり、手を後ろに引っ張られたりしただけで肩がはずれることがあるので、運動中は常に不安感がつきまとってプレーに集中できず、本来のパフォーマンスが発揮できなくなります。
■なぜ起こるのか
肩関節は構造上、体の中で最も安定性がない関節といえます。そのため、大きな外力が肩にかかると容易に脱臼してしまいます。図のように肩関節を脱臼したと き、多くの場合は関節唇(関節の土手をつくっている部分)や関節包(関節を支える袋状の組織)、肩関節を構成する骨の損傷を伴います。
■どうしたら治るのか
肩関節を脱臼してしまったら無理に自分で戻そうとはせず、急いで病院を受診するようにしましょう。正しい知識の無い人が誤った方法で整復すると、肩周囲の血管や神経を傷つけてしまう恐れがあるので大変危険です。
整復後は数週間、肩を固定し安静に努めます。同時に、肩関節に負担がかからない方法で、筋力強化を目的としたリハビリテーションを開始します。
脱臼・亜脱臼の頻度が少ない場合には、脱臼を起こすような動作(例:腕を横から体の後方にまわすような動作)を避けて、肩関節周囲の筋肉(主にインナーマッスルと呼ばれる深層の筋肉)を積極的に強化することで治ります。
しかし、治療をしても脱臼をたびたび繰り返し、日常生活にも支障をきたすような場合には残念ながら手術が必要になることがあります。
手術は骨を肩関節に移植して、関節の前方を補強する方法や、関節包を縫い縮める方法などがあります。いずれの手術も関節鏡と呼ばれる細い管状のカメラで行うので、傷口も小さく、体への負担も最小限にとどめることができます。